理科準備室準備室

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二見瑛理子SS 「三笠山のスーパーフルムーン」

この間、アラフォー男性二人に拉致られてカレー食ってきました。
Twitterでお知り合いのちひろさん(@hm13chibi)とオイサン(ikas2nd)です。
その時の様子はお二人のblogに詳しいです。

■懲役1200キロカロリー -更新第651回-(オイサン)
20110328 アラフォーオヤジ高校生を拉致ってカレーを食らう!?(ちひろさん)

お二人の記事を見ればわかるように割と間の悪さ全開な感じだったんですが、実はこの日(3/19)、本来は僕の学校の終業式だったらしいのです。震災の影響で延期になったのですが。
んで当日まで、それに気づかないでスケジュール組んじゃってたんですね……、ははは(冷汗)
まぁ楽しめたので結果オーライとしましょう。
カレーも食ったし。ご馳走様でした。……最近、若者の特権を行使することを覚えつつあります。

それはさておき(さておいていいのか)、その日はスーパーフルムーンだとかなんだとかで月がとても綺麗でした。
そんなわけでもう一本書いてみました。







夜風に当たろうとして二人してバルコニーへ出た。二人で出るとなおさらその狭さを感じるような、小ぢんまりとしたものではあったが、川のすぐそばにあって眺めはよい。
僕たちの頭上には皓皓と輝くお月さまが坐していた。白く清らかなその光は夜の冷気に混じって僕たちの頬を刺した。

「今日はね、スーパーフルムーンなのよ」
「何それ?」
「月が地球に最も接近していて、いつもより大きく輝いて見えるのよ。普段の満月の14%増しでね」
「へぇ。通りで明るい訳だね」
「ええ。20年ぶりだそうよ」
「20年か……。ちょうど僕達が生れた頃だね」
「そうね」
「長かったのか短かったのか……」


天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出し月かも


「あら、何?いきなり」
「いや、月が綺麗だったからね。……僕、もしかしたら詩人の才能があるのかも知れない」
クスッと笑ってこちらを振り向いた瑛理子に、僕は努めて真面目な顔でそう答えた。

「詩人になるのは勝手だけど、盗作はいけないわ。論文でも、盗用や捏造なんて最低の行為よ」

瑛理子も負けじと、いつになく厳しい顔をした。
瑛理子がこういうユーモアの類(?)を、軽く応酬できるようになったことに、出会ったばかりの頃を思い出して少しの感慨を抱きつつも、僕はいささか拍子抜けしてしまった。

「やっぱ知ってたか。瑛理子はこういうのに興味ないだろうと思ったんだけど」
「小さい頃ママに覚えさせられたのよ、百人一首。意外と覚えているものね」
「なるほどね」


高校を卒業してすぐ、僕たちは結婚して海を渡った。互いの両親は反対したけれど、大人になろうとする僕たちを止めることはできなかった。最終的には一応了承を取り付けることができたものの、僕たちはそれ以来日本に帰っていない。一度くらいは顔を見せようと思いながらも、瑛理子の研究が忙しかったりで、実現できないでいる。


「ねえ、ねえ」

瑛理子の声で僕は回想と思考の海から引っ張りあげられた。

「ん、あぁ……ごめん。ぼんやりしてた」
「どうしたの?」
「いや……、ちょっと思い出してた。……昔、学校の授業で阿倍仲麻呂の話を聞いた時のこと」
「ふぅん」
「うん。あの時はよく考えたんだ。日本に帰れなくなっちゃって、中国で月を見てた仲麻呂の気持ち」
「さっきの句ね」
「普段、短歌を聞いて何かを考えることなんてないのにね」

僕たちの想像力は、荒れ狂う海に呑まれてしまいそうな朱い船、その先にあるはずの故郷、そして再び引き戻された異国の地で眺める月へと駆け巡った。しかし、それはすぐにこの小さなバルコニーに戻ってきた。

「今なら飛行機でひとっ飛びだしね」
「そうだね。地球も狭くなったもんだね……」
「クスッ、なんだかお爺さんみたい」
「ひどいなあ」

そしてしばらく二人で月を見ていた。僕は後ろから覆いかぶさるように腕を回して、瑛理子を抱いていた。瑛理子の髪はいつもいい匂いがする。
腕の中にほんのりと温もりが宿ったのもつかの間、冷気が肌を刺して寒さが体に染み込んできた。

「……そろそろ戻りましょうか」
「うん。風邪を引くといけない」

当初の目的は既に十分達成されていたので、僕たちはそそくさと部屋の中へ戻った。
それから、寝支度を整えてベッドのふちに座ってぼーっとしていると、いつの間にか瑛理子もやってきていて、こちらにすり寄ってきた。

「体が冷えちゃったわ」
「くっついてたのに?」
「だって寒いものは寒いから。早く春になればいいのに」
「春になったらまた、桜を見に行こうよ」
「ええ。そうね」

この町の中央を流れる川の両岸は遊歩道になっていて、その一部が桜並木になっている。この桜は戦前、日米友好の象徴として日本からアメリカに贈られたものだ。戦後、アメリカで育ったその桜が接ぎ木されて、今度は逆に日本に贈られたという。

「……瑛理子」
「なあに」
「さっきはウソをついていたよ。ごめん」
「あら、それって阿倍仲麻呂の話のこと?」
「えっ、どうしてわかったの?」
「さぁ、どうしてかしらね」
「本当はスーパーフルムーンのことを考えてたんだよ。その、日本でも同じように見えるのかな、って」
「……そういうことだろうと思ったわ」
「瑛理子にウソはつけないな……」
「つかないほうが身のためよ?」
「参っちゃうねこりゃ」

少しの間沈黙が部屋を包んで、そして瑛理子が囁いた。

「今度、ママに聞いてみようと思うわ。月が見えたかどうか」

やっぱり桜は本場のものを見るべきだろうか、と僕は思った。






戦艦三笠の名前の元ネタもこの三笠山みたいですね。
あとバルコニーとベランダの違いがわかりました。屋根があるのがベランダでないのがバルコニーだそうで。
ちなみに二人が住んでいる街は本物の日米桜があるワシントンDCではないです。


というわけで、お二人とも、今後もよろしくお願いします。
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えりりんSS | コメント:6 | トラックバック:0 |
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コメント

久方ぶりの二見瑛理子SSを拝見させていただきました。
読みたいなと思いつつ、しばらく更新がなくて、
正直、少し待ち遠しかったです。
毎回毎回レベルが高くて、
先に始めた僕の方が参考にさせていただいています。

スーパーフルムーンですか……初耳です(笑)
そういうことにはとことん疎い僕なので、
せっかくのチャンスを逃してしまいました。
スーパーフルムーンに、過去の詩人の詩を合わせて、
やっぱりレベルの高いSSだと思います。
読んでてすごく勉強になります。

これからの活躍に期待しています。
僕も頑張らなくちゃ!
2011-04-06 Wed 09:48 | URL | 七咲しゅう [ 編集 ]
 SS拝読しました。
 異国の地に浮かぶスーパーフルムーン。
 阿倍仲麻呂の歌にひっかけて日本に想いをはせる二人。
 光景が眼に浮かぶようです。
 「天の原~」の歌はその背景から私の中ではとても感慨深い歌になっていて、
お話を読み進めて、この歌が出て来たときに、しばし読み進めるのを忘れて
頭の中で歌を反芻していました。
 彼はどんな思いでこの歌を詠んだのだろう、と。
 何度も何度も考えたはずのことを、また。
 そして次に感じたのは、阿倍仲麻呂が見た月もスーパーフルムーンだったのかも
しれないなあ、と言うこと。
 それはともかく。
 多分、高校当時の二見さんであれば、地球と月の公転軸による月の地球への大接近が、
太陽と地球の公転軸のタイミングと絶妙にあったことによって今回は満月となった、
だからいつもよりも14%明るい、と言う予見できる物理事象として片付けたのかも
しれませんね(そんなイメージで彼女を捉えているけどあってるかな?)
 彼女をして、故郷へ想いをはせさせしめる過程における、相原さんの存在&影響の
大きさと、トリガーとしての阿倍仲麻呂の歌が印象深いお話でした。

 あえて言うならば、これは見せ方の問題ですが、どこからお話が始まったのかが
わかるようにブログとしての導入部分とSSとの間に「タイトルを挟む」とか
区切り線を入れる、などの工夫があるとよりわかりやすいかもしれないなあ、と
思いました。
 横須賀といい表参道といい、こちらの都合で連れ回して申し訳ない(苦笑)
 これからどんどん忙しくなるでしょうが、今後ともよろしく。
2011-04-06 Wed 12:10 | URL | ちひろ(ちびすけ父さん) [ 編集 ]
ども。ご無沙汰です。
これからしばらくまたほとんど更新できないと思いますが……。
でも期待して読んでいただけるのはありがたいことです。誰かの目があることは刺激にもなりますし。
お互いこれからも精進しましょう。

スーパーフルムーンのことは僕もよく知らないんですけどね。
ド文系なもんですから……(汗)
2011-04-06 Wed 22:27 | URL | 3toku [ 編集 ]
いつもどうもです。

僕も個人的にこの歌が好きだったこともあり、今回のお話に使ってみました。
物理的事象に関しては疎いのであまり多く語ると間違いそうでひやひやしてますが……。
二見さんもそれがわかってるのであまり詳しいことは話さないでおいてくれますきっと。
向こうでの生活にも慣れた頃合い、仲麻呂、月の各要素がうまく機能していてくれたらしてやったりです。

普段は区切り線を入れているのですが、今回は忘れてしまい(汗)
注意力散漫でした。
ご指摘ありがとうございます。

こちらこそよろしくお願いします。
2011-04-06 Wed 22:40 | URL | 3toku [ 編集 ]
その節はどうも。
オイサンです。
 
いやー……毎度毎度、やられるなあ。
これまた、オイサンの大好きな類のお話運びでして、シンシンと胸に響きます。
 
月から句、そしてその句の詠まれた背景にまで一気に繋がるスピード感と、
その速さに反して、句の背景と主人公たちが重なる静けさのコントラストが
まず読んでいて鮮やかですし、退屈させないです。
出だしで完全につかまれました。
それを繋ぐ地の文章も、前にも増して鋭さにが増してますね。
 
最後に、その大きいはずの月が小さな点に見えるほど広がる、
海を渡る視点にグーンと引き込まれました。
面白い。
 
なんというか、恐らくは普遍であろう人のこころの構造が
ちゃんと組み込まれているのがまたジンときちゃいます。
空の月を見上げて淋しさとともに故郷を思うのは、昔から変わらないんでしょうねえ。
そこにえりりんの親子関係の話を繋げて来る当たりは、
短編としてでなく、長編のある一節を抜き出してきたような余韻もあって、
これはもう。
感服でございます。
 
というわけで。
あのgdgdな会合でダメなオッサンがくたびれてる間にこんなステキなことを思いつくのは、
若さゆえの瑞々しさなのか、隙のない心構えのなせる業なのか……
いずれにしてもオイサンは猛省する所存なのです。
ですので、またの機会もぜひ宜しくお願いします。
オイサンもそちらから色々盗ませていただきたいと、
すっかり本気で思う往生際の悪いオッサンでした。
 
 
2011-04-09 Sat 09:16 | URL | ikas2nd [ 編集 ]
どもです。

今回も多分に気に入っていただいたようですこし恐縮です。
感受性とかその辺お互い似通ったりするところがあるのでしょうか…w

実はこのテーマで長編も考えているのは確かに事実でして。
まだどう膨らませようかなーという段階でしたが、それならこの機会にまずは試しに書いてみようかといったところなのでした。

てなわけで
こちらの方こそ色々盗むことがあると思いますし、今後ともよろしくお願いします。

2011-04-16 Sat 23:08 | URL | 3toku [ 編集 ]

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